書評:半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防

書評

半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 クリス・ミラー (著)

これは凄まじい本です。10年に1冊レベルの名著。

丁寧かつ膨大な取材に基づいた、半導体の歴史。その黎明期から詳しく調べ上げて書かれています。半導体業界のみならず、地政学とも絡んだ、現代人必読の書。半導体業界の著名人たちの名前が続々と登場し、歴史小説を読んでいるかのようなワクワク感があります。分厚い本ですが、楽しく最後まで読み切れてしまう。

最近はAI需要との関係もあってNVIDIAの株価が話題ですが、私は本書を読む限り、NVIDIAやTSMCの牙城はちょっとやそっとでは揺るがないと考えています。短期的にはいろいろあるでしょうが、中長期的にはトップがさらにトップになって寡占していく。これが半導体業界に特有の現象だな、と。

詳細は本書を読んで欲しいのですが、最先端技術を投入した半導体は、もはや簡単にまねできない。後追い参入が非常に難しくなっています。カネさえあればいいってものでもなく、技術・ノウハウの蓄積も必要。サプライチェーンの構築も必要。TSMCなんて特に代わりが効かない。TSMCでないと作れないものがある。

最近の米中貿易戦争や半導体戦争(本書のタイトルにもなっている)の影響で、中国は自国のみでもだいぶ半導体を自給自足できるように態勢を整えてきてはいるようですが、今後はどうなるでしょうか。

半導体に興味のある人、IT業界の人、政治経済のエリート層の人、投資家などは、絶対に本書を読んで半導体およびその周辺業界、政治や経済との絡みについて、学んでおくべきでしょう。かつて「半導体は産業のコメ」と呼ばれていましたが、いまやコメどころの重要性ではありません。「半導体はこの世の全て」と言っていいくらい、半導体を制する者が世界を制する状況になっています。

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