最近のAIブームでよく言われる「SaaSの死」ですが、私はかなり懐疑的です。
私自身も各社のAIを使っているし、Claude Codeで実際の開発などもしています。AIは確実に世界に革命を起こしていると思っています。でも、SaaSはまだまだ死なないだろうとも思っています。現在のAIでは全然代替できない。
確率よりも確実
たとえば分かりやすいのが企業の会計・経理。数字や計算はもともとコンピュータの得意分野ですから、AIでもうまくやってくれるような気がします。しかし、現行の生成AIが「確率的」である以上、大事な経理処理などは完全には任せられません。確実な再現性がないと困るのです。
従来からあるSaaSはその辺の確実な再現性が保証されているのが大きい。多くのユーザによって長年使われてバグが洗い出されているSaaSと、各企業がそれぞれ個別独自に作ったAI製システムと、どっちが信頼性あるか、という。
それから現場の実務的な面でも、「じゃあ誰がAIに指示するのか」という問題もあります。各企業がこれまでいろいろなSaaS(旧来の意味での)を使っているとして、それを代替する作業をAIが仮にやれるとしても、AIに的確に指示できる担当者がいないと出来ない。
結局まだまだエンジニアの素養が必要
バイブ・コーディングが「ソフトウェア開発の民主化」と言われ、非エンジニアでも実際にアプリ開発できるようになりました。しかし、ちょっと込み入ったことをやろうとすると途端に破綻したり、やっぱりエンジニアの知見がないと難しいことも多いのが現状です。つまり、各企業において「エンジニア的な知見のある人が、各種業務について的確な指示をAIに出す」ということをやるコストをかけるくらいなら、旧来からのSaaSを利用したほうがずっと安くて早くて確実だろうと思われます。そもそも小規模企業などではそれ用の人員を割くことも難しいでしょう。
先日、私も自身の業務の一環として、「1年分のクレジットカード明細を会計ソフトに手動で仕訳入力する」という作業を自動化したいと思って、Claude Codeに頼りました(※Coworkが適していそうな作業にも思えますが、まだ研究プレビューとのことなので私は使っていません)。具体的には、クレカ明細のCSVから必要なデータを抽出し、会計ソフトにインポートできるCSV形式に整形することが目的です。最終的には目的を達成できましたが、自然言語による指示だけで完全に丸投げするのは無理で、途中で試行錯誤が多少ありました。これを非エンジニアの方ができるとは思えません。
社外秘情報の流出懸念などのセキュリティ問題もあるし、なかなかネットワーク越しのAIモデルで全てを上手くやるのは難しい。かと言ってローカルLLMはまだまだ実用的な性能ではないようですし。
AIはどれくらい信用できないか
AIのハルシネーションが有名ですが、どれくらい信用できないかを数値化するのは難しい。
ただ私個人の体験で言うと、Claudeが自身に備わっている機能を知らないと答えたり、Geminiが「私は画像生成は出来ません」と言ったり、ChatGPTがしょうもない忖度おべっかばっかり言ったりと、まあまあのアレ具合だなと思っています。(※ちなみにどれもつい最近、2026年3月~4月に起きたことです)
AIを使いこなす以前に導入でつまづく人のほうが多いはず
そもそも、いくらアプリ開発の民主化とか言われても、「誰でもアプリ開発できます! Claude Codeをインストールしましょう! まずはターミナルを開いて…」とかいう時点で普通の「まともな人」は脱落するでしょう。
これまでの歴史を見ても、DOS/V登場とかWindows95登場とか、「コンピュータの民主化」と言えるエポックメイキングな出来事はたくさんありましたが、結局、今も昔も「コンピュータをうまく扱える人」の割合はあんまり変わっていないように思います。そもそもコンピュータなんて面倒臭いし、できれば触りたくない、誰か代わりにやってくれ、と思っている人の方が多数派なのではないでしょうか。
というわけで、急に雑に結論になりますが、SaaSはまだまだ死なない。
(※ただしAIの進歩スピードは凄まじいので、常に「今のところは」という枕詞が付きます)

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