USBメモリを「USB」と略すのは間違い

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現在、ほぼ誰でも持っているくらいの状況にまで普及した、USBメモリ。

そのUSBメモリを省略して「USB」と呼ぶ人が近年大多数を占めているように思います。
しかし、それは間違いです。

USBメモリを「USB」と省略するのは、ガソリン車を「ガソリン」と省略するようなものです。ガソリンを使用するものは自動車以外にもたくさんあるので、「ガソリン」とだけ言ってもそれが自動車のことを指すことにはなりませんよね? USBメモリをUSBと略するのも同じです。

USBとUSBメモリの違い

ではここで、USBとUSBメモリの違いについて、ごく簡単に説明します。

このように、「USBという規格で接続できるメモリ」だから「USBメモリ」なのであって、それを「USB」と省略するのは間違いだということが分かりますよね。USB規格で接続できる機器は他にも無数にありますから。たとえばUSBキーボード、USBマウス、USBハードディスク等。あなたが使っているスマホの充電ケーブルもたいていUSB規格ですね。

家庭のコンセントに接続して使える家電の数々を総称して「コンセント」とは呼びませんよね? ですからUSBで接続して使えるメモリを「USB」と呼ぶのは間違いなのです。

さらに言えば、メモリだってUSB接続以外のメモリがたくさんあります。一般的に身近な例としては、スマホやカメラなどに使っているSDカードもメモリの一種です。もっと言えば一口に「メモリ」と言っても、SDカードやUSBメモリに代表される「フラッシュメモリ」だけでなく、パソコンの主記憶装置として使うメモリ(DRAM等)とか、メモリにもいろいろあります。

このように、「USB」にも「メモリ」にもそれぞれ包含する複数の種類があるわけで、「USBメモリ」はそれ以上省略しようがない単語なのです。すなわち「USB」と略すのも「メモリ」と略すのも問題があることがお分かりいただけるかと思います。

(※ただし厳密に言えば、USBメモリを「メモリ」と略すのは間違いではありません。しかし「USB」と略すのはこれまで述べた通り、間違いですね。)

言葉の変遷として認めるべきか?

ここで、「言葉は変化していくもの。世の中の多数が使っているならそれが正しくなる」という反論もあるでしょう。誤用の定着はあって然るべき、という主張ですね。

しかし私はそれは違うと思います。

自然言語とは違って人工の技術用語ですから、自然に意味が変化してしまっては意図が正しく通じなくなる恐れがあるためです。

特にUSBの場合、もはや普及しすぎていてメモリ以外にも多数の接続機器が存在します。外付けHDDもスピーカーもヘッドホンもキーボードもマウスも、いまやほとんどUSB接続のものばかりです。USB接続の機器がUSBメモリしか存在しないのでしたら良いのですが、USB接続機器はメモリ以外にも無数にある。だから特にUSBに関しては「誤用の定着」を認めてしまうと、非常に大きな混乱が発生するというか、ややこしい事態になってしまうのです。

自然言語の「食べられる」が「食べれる」に変化する話とは、ちょっとワケが違うのです。だから、今のうちに間違いを正しておく啓蒙活動が必要だと感じています。

学校教師まで誤用している現状に危機感

私の知り合いで小学校の教員をやっている20代の男性がいます。
彼もまた、「学校の資料をUSBに入れて・・・」などと話していました。

USBメモリをUSBと呼ぶ誤用は、ついに子供たちに教える立場である教員にまで広がっているのです。これは由々しき事態であり、せめて教員くらいは生徒たちに正しい言葉を教えなければいけません。

技術の話なんて一般人にはどうでもいい?

技術に疎い人からすれば、
「そんな技術オタクみたいな話には興味ない。みんなUSBで意味が通じているからいいじゃないか」
と思うかもしれません。

しかしこれは技術の話ではなくて、実は国語の話、あるいは言語能力の話にも広がってくるのです。

冒頭で、USBメモリをUSBと省略することの違和感について、ガソリン車をガソリンと略す例を示しました。ここで再度、その例にならって同じように間違った省略の仕方を列挙してみます。

  • 【凡例】本来の語 → 間違った省略形
  • USBメモリ → USB
  • ガソリン車 → ガソリン
  • 電気自動車 → 電気
  • 電気毛布 → 電気
  • プラスドライバー → プラス
  • マイナスドライバー → マイナス
  • 油性ペン → 油性
  • 水性ペン → 水性
  • 米粉ドーナツ → 米粉
  • 米粉パン → 米粉
  • ハードワックス → ハード
  • ハードディスク → ハード
  • 恋愛相談所 → 恋愛

以上をご覧になっていかがでしょうか。

いずれも右側の省略形を見ただけでは意味が通じない、または意味が特定できない、あるいは全く別の意味になってしまう。

「ハードディスク」のことを「ハード」と呼ぶオジサンとか、けっこういますよね。会話の流れの中で聞けば分かるかもしれませんが、ただ単に「ハード」とだけ聞いても何のことだか意味がわかりません。

このように前後の文脈を共有しないと意味を特定できない単語は、一般的な会話では使うべきではありません。会話ですらその瞬間の当事者どうしでしか理解しづらいのですから、文書や映像など記録に残すものとなるとなおさら省略形では意味が伝わりません(そのような映像の特性を利用して意図的に文脈を編集するのが得意なのがマスコミですね)。

「USBで接続するメモリ」、「電気で暖まる毛布」、「ガソリンで走る車」などと補完できる知識・教養、あるいは想像力・言語力があれば、間違った略し方を防げますね。もし知らないのならGoogleで調べればいいのです。

USBメモリ、と正しく呼びましょう

このように、「USB規格で接続するフラッシュメモリ」という意味を略して「USBメモリ」になっているのですから、それをさらに「USB」と略してしまうのは完全に間違いであり意味も通じなくなってしまうことがご理解いただけたかと思います。

大人たるもの、子供たちにも正しい用法と意味を教えてあげましょう。

ちなみに上記画像は「SDカード」ですね。これもメモリの一種(フラッシュメモリ)です。

コメント

  1. […] 115: 名無しさんがお送りします 2015/10/14(水) 14:45:47.86 ID:oXGHyG/hW USBメモリを「USB」と略すのは間違いhttp://terahit.com/2015/04/28/usb-memory/ […]

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