90年代から2000年代頃に青春を送った人が死にたくなる漫画、『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』

若い頃にサブカル好きをこじらせた黒歴史を持つあなたへ。
僕もそうでした。

自分を過信し「俺はいつかビッグになる」と本気で思っていたが、いつのまにか冴えない中年になったあなたへ。
僕も同じです。

テレビ局や出版社など、マスコミやギョーカイに憧れている人へ。
大学生に多いですよね。

若者にありがちな夢見るワナビーと、その後の悲しい現実。
その辺りの心理を含めて絶妙な描写をしてみせてくれる漫画家・エッセイストの渋谷直角さん。

その渋谷直角さんの新著『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』という漫画がめちゃくちゃ面白い。
1990年代から2000年代くらいに青春を送ってきた人にとっては、心をえぐられるというか、黒歴史をほじくり返されるというか、そういう「痛み」を伴う内容です。

しかし現実に打ちのめされた後に次の段階に進んだ者にとっては、きっと、いま振り返れば笑える痛みであるはず。
挫折を経験し、いつしか「人生とはそういうものだ」という思いに至る。
しかもそれは諦めや負け惜しみとは全く違うものだということを悟る。

「これが人生か」ではなくて「これが人生だ」。
これに気づくのは30歳を超えて数年以上は経ってからでしょう。
特に結婚して子供が生まれたりなんかすると、余計にそうした思いは強くなるのでは。

この漫画は、2015年現在で30~40代くらいの人に最もマッチするエピソードが満載。
ですが、ディテールではなく本質に着目すれば、永遠の人類のテーマである「青春と挫折」を扱っている本です。
誰が読んでも「あるある!」「自分もそうだった」と膝を打つことでしょう。

この本は渋谷直角氏の前著『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』という漫画の続編というか、補完しあうパラレルワールドと言ってもいい内容。

ぜひとも『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』を先に読んでから『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』を読んでいただくと、より楽しめると思います。

それにしても『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』ってものすごいタイトルですね・・・。
キャッチーなのにグロテスク。

もはやタイトルだけで「元・ワナビー」たちを何人か気絶させることが出来るのではと思えるほど秀逸な書名です。

渋谷直角さんの漫画にはネット世代の特徴(本質的には永遠に変わらない人間の業)もよく捉えられていて、読んでいて思わずニヤッとしてしまいます。

これら渋谷直角氏の漫画に対して、一定の割合で「バカにして嘲笑っている漫画だ」みたいな主旨の批判があるようです。渋谷氏はワナビー(元ワナビー含む)層から見れば「成功側」に行けた人間ですから、どうしてもそういう妬みに近い目線から評価されてしまうことは避けられないでしょう。

しかし僕はこれらが嘲笑だとか上から目線でバカにしているだけの漫画だとは思いません。
もちろんそういう要素はあるにはありますが、それは「同じ目線」というか、ほとんど「過去の自分」へ向けたものですね。
それは渋谷直角氏自身の過去でもあるし、読んでいる読者の過去でもあるし。
過去の痛かった自分、そしてその痛みを今も引きずっている人たちへの救済であり、心の処方箋。
それが本書の本質です。

この漫画を読んで怒り出す人は、今まさに「夢の途中」にいるか、あるいは今風に言えば「意識高い系」の人なのかもしれません。
10年後、あるいは20年後。そんなあなたもきっとこの漫画の内容を理解できる日が来るはず。

青春真っ只中の人も、すでに枯れてしまった人も、いろいろな思いで味わえる本書。
絶対のオススメです。

スポンサーリンク

フォローする

スポンサーリンク